平成くん、さようなら 感想
タチバナです。古市憲寿さんの「平成くん、さようなら」を読みました。
古市さんのメディアでの視点や物言いが好きで、芥川賞の候補作品にも選ばれたということで今回読んでみました。
安楽死が法制度として認められた現代の日本が舞台で、安楽死を考える彼氏とその気持ちを受け止められない彼女を中心に物語が描かれています。
彼氏の方は古市さんをモデルとしている様で、彼が持っている交友関係や仕事に近しいものを、物語の主人公である平成くんも持っています。
性格はどうなんでしょうね。平成元年生まれの若者?らしくクールでドライな面や、性的な接触を嫌い、自分のこだわりを優先する、平成の20代のステレオタイプの様な描かれ方をしています。
安楽死を選ぶ彼氏の価値観を尊重したいが受け入れられない、受け入れたくないが受け入れる。葛藤しながら安楽死に向き合う彼女。
架空の世界の話ですが、実在のブランドや芸能人の名前も出てきて、親近感が湧くというか、こういう人達も東京のどこかにいるんだろうなーという気になります。
飼い猫への向き合い方などで、結局彼氏の人格、価値観を完全に理解しきるのは無理なのかと思われたり、実はそうではなかったり、色々あって平成くん、さようならというタイトルに帰ってきます。
少し結末が寂しい気もしますが、ご都合主義のハッピーエンドよりは好感が持てました。平成という一つの時代の終わりの空気と上手くリンクしていたように思います。
テーマも個人的に非常に面白いと感じましたが、やはり地の文のレベルがプロの作家さんじゃないので、もったいないなーと思ってしまいました。
極上の素材を並のシェフが料理したような感じですかね。
オススメ度は10点満点中の4点です。
でも次回作があれば必ず読みます。